離してよ、牙城くん。


「ん。だいじょーぶ」



わたしの頭に手を乗せて、わしゃわしゃと撫でてくる。

くすぐったくて目を細めると、彼はやわらかい瞳で見つめてきた。




「じゃあ、また月曜日」




わたしに手を振り、そのあとすぐにスマホを取り出して言う。




「……ああ、うん。いまおまえらがいるそこの通り、綺麗にしといて。跡残すなよ」




なにやら呟いていたけれどその声は聞こえなくて、牙城くんにまた怒られないうちに早足で家路についた。



もう少しで着く……、というときに。




「あれー、朝倉さん?」





……と、またまた今日2回目の声が。




「あ、淡路くん……?!」





淡路くんが、なぜここに?


まさか……、彼もそういうこと?





びっくりしすぎて唖然とすると、淡路くんは苦笑いをして口を開いた。





「あ、俺ね。牙城に雇われてんの」



「や、やとわれ……っ?」








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