離してよ、牙城くん。


まさか自分のものをわたしに分けてくれるなんて思わなくてびっくりした。


なんとなく、牙城くんって自分のテリトリーには誰にも寄せ付けないイメージがあるもん。




朝から甘いものは重いかな、と思いつつも飴は好きだから、控えめに頷いた。



「ん。どれがいい?」



ざっとみると、同じ種類がふたつずつあるから……5種類かな。

どれもフルーツの味らしく……、迷った結果、パープルのものを指差した。




理由は、よく、牙城くんが口に含んでるから。



意味はないけど……、ただ、牙城くんとおなじものを共有したかったのかもしれない。


最近、彼の姿に靄がかかって見えて……、届くのならあわよくば手を伸ばしたい、そんな気持ちがあったんだ。






「俺も葡萄にしよーって思ってた」





嬉しそうに はい、と渡され、「ありがと」とお礼を言う。



ぺりぺりっと包みを外しながら、口を開く。





「がじょーくん」







< 113 / 381 >

この作品をシェア

pagetop