離してよ、牙城くん。
わざと、ゆるめに呼んでみた。
「なーに。ももちゃん」
同じように返してきた牙城くんにクスリと笑いながら、口を開く。
「牙城くんって、……女の子に慣れてる?」
「……は」
話題に脈略がなさすぎたせいか、ぽかーんとしている牙城くん。
なんでそんなこと言われるのかわからない、って顔してる。
だって、だって。
わたし、ずっと思ってたんだよ。
牙城くんは、学校では女の子にまったく関わらないけど……、夜の世界ではそういうこと、してるのかなって。
それに……、たまに甘やかしたり意地悪したり……そういう緩急が絶妙で、慣れてるとしか考えられないんだもの。
ぷくり、と頰を膨らましたわたしに、牙城くんは驚きから解け、クスリと笑った。
「ほんとさ、百々ちゃんって鈍いよな」