離してよ、牙城くん。


わざと、ゆるめに呼んでみた。



「なーに。ももちゃん」




同じように返してきた牙城くんにクスリと笑いながら、口を開く。




「牙城くんって、……女の子に慣れてる?」



「……は」





話題に脈略がなさすぎたせいか、ぽかーんとしている牙城くん。


なんでそんなこと言われるのかわからない、って顔してる。




だって、だって。


わたし、ずっと思ってたんだよ。




牙城くんは、学校では女の子にまったく関わらないけど……、夜の世界ではそういうこと、してるのかなって。



それに……、たまに甘やかしたり意地悪したり……そういう緩急が絶妙で、慣れてるとしか考えられないんだもの。




ぷくり、と頰を膨らましたわたしに、牙城くんは驚きから解け、クスリと笑った。




「ほんとさ、百々ちゃんって鈍いよな」










< 114 / 381 >

この作品をシェア

pagetop