離してよ、牙城くん。
「それ、遠回しにわたしには色気ないって言ってるでしょ……!」
このぉ……っ!
デリカシーに欠けてるんだから!
いいんだ、別に!お子さまでも好き勝手言いなさい!
牙城くんに怒って憤り、口に含んだ棒つきキャンディをガリガリ噛み砕いたけれど。
そのせいで飴の欠けらが喉に刺さってしまい「ぐぅお……っ」となんとも可愛げのない声が漏れてしまった。
こういうとき、『きゃっ』とか言えない自分が恨めしい。
色気どころか、女子力もないなんて悲しすぎる……。
けれど、牙城くんは「変な声もかわい」とわけのわからないことを呟いていたから、それは無視させてもらった。
彼は、本当のことを言っているのか否か、まったく読めないから。