離してよ、牙城くん。
ゴホゴホ咳き込むわたしの背中をさすりながら、牙城くんは愛おしそうに見つめてくる。
「俺が捕まえたからには誰んとこにも行かせねーからさ、安心しな?」
「げほっ、……安心できない」
「えー?俺が縛ってあげるのに」
「縛らないで?!」
牙城くんの茶々のおかげか喉の痛みも消えて、ふう、とひと息つく。
校門をくぐり、牙城くんの少し手前を歩く。
前のほうでお友だちが手を振ってくれていて、おなじく振り返した。
「……百々ちゃんだけは死んでも離さねえわ」
「……え?牙城くんなにか言った?」
「ん、スカートのチャック開いてるよ」
「えっ、ううううそ?!」
慌ててスカートに手を当てて確認するけれど……、閉まってる。
嘘をつかれたと気づき、憤慨する。