離してよ、牙城くん。
「もう、変なこと言わないで……!」
しょうもなすぎる!
本当だったら大変なことになってるんだから!
牙城くんとはというと、とぼけて「あれー?」とかなんとか言ってるけど!
ぜったい許してあげない!
「あれ、朝倉さん。牙城にいじめられてるの?」
怒ってバシバシ牙城くんを叩いていたら、たまたまなのか読めないけれど通りかかった淡路くんが軽く声をかけてきた。
牙城くんと淡路くんとわたし。
このスリーショットははじめてでなんだかこちらが緊張してしまう。
それに、あの夜のことも思い出してしまう。
ふたりの間では触れないようにしていた、あの日。
“ 俺を怒らしたら大変なことになるんだよ ”
月の光に照らされた妖艶な牙城くん。
見ないふりをしたいほど、わたしの知らない彼だった。