離してよ、牙城くん。
二股……、ずるい……、かあ。
面と向かって言われてはいないけれど、どこか心の隅っこで傷ついてしまう。
わたしはもともと、女の子に好かれる体質じゃないから、こういうのはたくさん経験してきたから慣れてるはずなのに。
何度経験しても、やっぱり……陰口、は嬉しくなんかない。
牙城くんと仲良くするのが、いけない……?
彼が不良で、女の子嫌いで、すごくモテるから?
わたしだけを構うから?
そうだとしても、わたしは牙城くんからは離れない。
だれになんと言われても、噂なんか信じないって決めている。
もしこういうのが牙城くんに聞こえたら、おおごとになってしまうのは目に見えていて。
……耳に入ってたり、しないよね。
そろーっと牙城くんを見ると、彼は淡路くんとまだ口論を続けていて、聞こえている様子はなかった。