離してよ、牙城くん。
まだ、ややこしい感情には知らないふりをさせてほしい。
子どもみたいに、まっすぐに欲しがって、求めて。
ただ、それだけでいい気がする。
わたしの言葉を真剣に聞いていた牙城くんは。
わたしが口を閉じた途端、とんでもない勢いでわたしに飛びつき、痛いほど強く抱きしめた。
みんなが怖い、危ない、恐ろしい。
そう思って近づかない牙城くんは、本当はだれよりも繊細で。
わたしを……、いちばんだと言ってくれる、強くて弱い、不良さんだ。
「……ももちゃん、俺、ほんとももちゃん好きすぎる。なあ、好き。ほんと好き。どうしようもないくらい好きだよ」
「……すっ?! う、っえ、あの……がじょーくん?」
牙城くんが……、わたしのこと、好き?
好きって……、友情のライクじゃなくて恋愛の、ラブの方?
戸惑うわたしはお構いなしに、彼はどんどん言葉を紡ぐ。
「百々ちゃんの、こういうところに……、一瞬で心を奪われたんだよなあ」