離してよ、牙城くん。
「俺のカワイー百々ちゃんを傷つけたやつは、お仕置きしないとねえ……」
にっこりと黒い笑みを浮かべた彼に、なんとか苦笑いで誤魔化す。
「そんなのしなくていいよ……?」
「あ? 無理だろ。だってさあ ────」
“牙城渚(俺)を怒らせたら殺される” って言うじゃん?
微笑む彼の、煌びやかに艶めく唇は弧を描いて。
息を呑むほど妖艶に、ひとこと吐いたのだ。
……あのね、牙城くん。
それを本人が言うと、すごく信ぴょう性が高くなるのですが……。
.
それからというもの。
この事件があってから、だれも佐藤さんの姿を見た者はいないという───。