離してよ、牙城くん。
そう言われてしまうと、帰らざるを得ない。
もとは花葉についてきただけだから、もう帰っても問題はないんだけれど。
どうせなら、もっと椎名さんとお話したかったのも事実だ。
わたしの知らない牙城くんを知ってる貴重な人。
でも、知らないのなら、牙城くんのことは牙城くん本人に聞くのがいちばんだ。
それなら、と腰をあげて帰る支度をする。
「気をつけてねー?
あと、ほかのだれかに、なんか言われるかもしれないけど気にしないこと。オッケー?」
……?
どういうことかよくわからないけれど、とりあえずうなずいておいた。
「百々、ひとりで大丈夫?」
心配そうな表情を浮かべる花葉。
いつものように少し過保護だなあ、と心が温かくなりつつも、そっと彼女に耳打ちする。