離してよ、牙城くん。
「……椎名さんと仲良くね?」
「わ、わかってる……! がんばる!」
またもや顔を赤らめて照れる彼女に微笑みながら、カラオケルームから退散した。
そっと静かに出たから、きっとほかのみんなには見られてないはず。
にしても、椎名さんはやっぱり不思議な人だったなあ……。
牙城くんのことを、よく知ってるという感じ。
花葉とうまくいきますように……、と願いながら歩く。
よし、ささっと帰っちゃおう。
家に帰ってお菓子でも焼こうかな……。
なんて、呑気に考えていた瞬間。
「あ、あの、朝倉さん!」
後ろから知らない声に名前を呼ばれ、びっくりして振り向いた。