離してよ、牙城くん。
「渚さんとナナさんが……」
……牙城くんと、七々ちゃん?
「────紫苑、廉」
ごくり、と、シオンくんの言葉に耳を傾けたけれど。
……彼の声で、その続きは遮られた。
わたしたちの後ろに立っていたのは、……いまちょうど話題となっていた噂の牙城くんだ。
いつも、牙城くんはいいタイミングで現れる。
予測不能で、どうしたって逃げ場のないときに。
牙城くんは、銀色の髪の毛をかきあげながら、わたしたちに一歩近づいた。
その瞳にはわたしは映っておらず、紫苑くんと廉くんにのみ視線が注がれていた。
「な、渚さんっ……!」
「渚さん……」