離してよ、牙城くん。
牙城くん、紫苑くんと廉くんのこと……知ってるみたい。
名前で呼んだところをみると、親しい間柄でもありそうだ。
だけど、対等な関係でないのが垣間見える、決定的なところ。
それは、紫苑くんと廉くんが、……牙城くんを畏怖の目で見ているところだ。
「……おい、百々ちゃんにそれ以上よけいなこと言ったらぶっ殺すよ」
狂気、危険、怒気。
いまの牙城くんを取り囲む空気は、どれも真っ黒だ。
「す、すみませんっ……」
「……申し訳ございませんでした、渚さん」
震えるふたりを見ると、やはり彼は怒らせたら恐ろしい存在なのだと知る。
最近、こんな牙城くんは頻繁に見ている気がするけれど、今日は……焦っているようにも感じられた。