離してよ、牙城くん。
「ぜ、ぜんぜんだよ?! 牙城くんに猫パンチだなんてからかわれてるくらいだし……!」
あの恨みは忘れてないからね? 牙城くん!
わたしのじとっとした視線を受けて、牙城くんは気まずそうに頰を掻いた。
「だってほんとだしー……」と、さらにバカにしてくる。
再び道場に通おうかと本気で思いつつ、ふたりに目を向ける。
「……牙城くんは、本当はとっても優しくてあたたかくて。素敵な人だよ」
わたしのまっすぐな瞳に、ふたりはうっと言葉を詰まらせた。
きっと、このふたりは【狼龍】のメンバーだ。
牙城くんに仕えてるんだろうし、素敵なところも知っているだろう。
だけれど、厚かましいけれど対等に、おなじ目線で彼と向き合えるひとりとして、わたしは言わせてほしかったんだ。