離してよ、牙城くん。
牙城くんの好きなものといえば、棒付きキャンディ。
それ以外に思いつくものはなくて、自分の無知さにだんだんと悲しくなってくる。
近くのコンビニで買って渡そうかな……なんて思いながら、話を続ける。
「花葉がね……? 椎名さんを好きになったみたいで」
「へえ? あいつのどこがいいんだか」
「……牙城くん」
「あーウソウソ。アイツ、イイヤツダヨネ」
「棒読みだってば……」
本当に、牙城くんと椎名さんの仲はよくわからない。
椎名さんのほうが、お兄さんって感じがする。
歳は変わらないのに、包容力があるというか。
牙城くんは、猪突猛進タイプだから、そのブレーキとなっているのが椎名さんという存在なのかもしれない。