離してよ、牙城くん。
歩いていた足を止め、わたしのほうを見る牙城くん。
わたしの髪をそっと耳にかけ、甘い空気がふたりを支配する。
牙城くんは、背が高い。
わたしよりも頭ひとつ分は大きいせいで、距離が遠く感じる。
身長差がもどかしい。
そっと頰に触れて、優しく撫でる牙城くんの大きな手。
いつだって安心するそのあたたかさ。
「俺さ、ふつうに百々ちゃんがほかの男に見られるの嫌だし、そんな奴ら二度と立てなくしてやりてえって本気で思ってる」
「……うん」
だめだよ、牙城くん。
わたし、牙城くん以外の男の人なんて知らないから、そんなことしなくていい。
「百々ちゃんがなんでそんなに可愛いのかまじで意味わかんねえし、そのおかげで男の目を引くのもほんっと無理」
「かわ、……っ」
「いい加減、俺が嫉妬ばかりしてんの気づいて。
……おねがいだから、これ以上苦しくさせないで」