離してよ、牙城くん。




歩いていた足を止め、わたしのほうを見る牙城くん。

わたしの髪をそっと耳にかけ、甘い空気がふたりを支配する。



牙城くんは、背が高い。

わたしよりも頭ひとつ分は大きいせいで、距離が遠く感じる。



身長差がもどかしい。




そっと頰に触れて、優しく撫でる牙城くんの大きな手。

いつだって安心するそのあたたかさ。







「俺さ、ふつうに百々ちゃんがほかの男に見られるの嫌だし、そんな奴ら二度と立てなくしてやりてえって本気で思ってる」



「……うん」




だめだよ、牙城くん。

わたし、牙城くん以外の男の人なんて知らないから、そんなことしなくていい。






「百々ちゃんがなんでそんなに可愛いのかまじで意味わかんねえし、そのおかげで男の目を引くのもほんっと無理」


「かわ、……っ」






「いい加減、俺が嫉妬ばかりしてんの気づいて。
……おねがいだから、これ以上苦しくさせないで」













< 188 / 381 >

この作品をシェア

pagetop