離してよ、牙城くん。
夕暮れの空の下、抱きしめ合うわたしたちは、他人から見ればきっと恋人どうしだろう。
わたしは、このあいまいな気持ちを知りたい。
牙城くんを、もっと満たしてあげたい。
よゆうな牙城くんを、壊してみたい。
「は、はじめてだから……、慣れてなくて、ごめんね……」
「え、……ファーストキス?」
驚いたように目を見開く牙城くんに、おずおずとうなずく。
……やっぱり、引いちゃったかな。
「まじかー…………」
絞り出したようにそう言うと、牙城くんは目を閉じて天を仰いだ。
もしかして……、はじめてだって言って、幻滅した?
慣れてるであろう牙城くんからしたら、わたしなんて経験不足で満たされないよね……。
じわっと涙が出てきて、「……がじょーくん」とそっと声をかけたけれど。