離してよ、牙城くん。
ちらりと横の教室を見るも、彼がいる雰囲気はない。
ふだんはイヤというほど絡みにくるのに、わたしが探したときはなぜかいない。
ほんと、……牙城くんは不思議な人だ。
頭の中の彼を振り払い、首をぶんぶん振っていると、佐倉くんが面白そうに笑っているから恥ずかしくなって即やめた。
それから佐倉くんに着いていって、来たのは階段裏。
人気が少なくて、……というか、だれもいない場所。
こんなところで話す内容なのかな……?とひとつ疑問に思っていたら、佐倉くんは意志を固めたように顔をあげた。
「……あの、あ、朝倉さん!」
「はいっ、な、なんでしょう……!」
急に大きな声を出されて、わたしもつられて叫んでしまう。
傍から見たら、とにかく奇妙な光景だろう。
「実は……ずっと、朝倉さんのことが好……」
「──── あれー、百々ちゃんだ」