離してよ、牙城くん。
「ちょっと待って。
……俺が百々ちゃんのはじめてって聞いて、感動してる」
え……、感動?
予想外の言葉に、びっくりしてしまう。
「幻滅……、しないの?」
「は? なんで?
死ぬほど好きな女の子に過去の男がいないって、俺、幸せすぎてどうにかなりそーなんだけど」
「そ、んなもんなの……?」
「わかってねえなあ、百々ちゃんさ、」
唇に滲んだリップを優しい手付きで拭ってくれながら、牙城くんは甘い顔で微笑むのだ。
「俺、ほかの男より、何億倍も嫉妬深いんだよ」
「なんおくばい……」
「こんな男に捕まって、百々ちゃんも大変だこと」
「それ……、自分で言いますか」
「まあ、だれにでもこうだったわけじゃないよ。
こんなに誰かを愛してやまないのは、本当に、百々ちゃんだけ」