離してよ、牙城くん。
わたし、だけ……。
牙城くんには過去にいくつもの恋があったのかもしれない。
だけれど、そのなかでもわたしがいちばんだと言ってくれる牙城くんを信じたいと思う。
「……がじょーくん、棒付きキャンディ買ってあげるね」
「んー? 急にどーしたの?」
「牙城くんの、喜んだ顔が……見たくなったの」
「あっは、百々ちゃんさ、俺のことキュン死にさせる気?」
からかうようにそうわたしの頰を突く彼だけど、心の底では照れてるのを知ってる。
「俺も、百々ちゃんの笑顔のためにアイスをあげるから、これでウィンウィンだね」
「んもう……」
牙城くんは、素敵な人。
だれよりも美しく、麗しく、恐ろしく綺麗だ。
だけど、わたしに見せる顔は……、少し幼くて無邪気だったりするのだ。