離してよ、牙城くん。
七々ちゃんは、本当にたまにしか帰ってこない。
それ以外、どこで過ごしているのかわからない。
わたしと顔を合わせると、とても気まずそうな顔をする。
……それはきっと、わたしが嫌な表情を隠さないからだと思うけれど。
「百々は……、ほんとに七々が好きなのね」
ふふっと微笑むお母さんは。
夜、まったく帰ってこない不良の娘がいるくせに、心配はあまりしない。
だけれど、とっても七々ちゃんを愛しているのがわかるし、咎めないのも彼女を信頼しているからだろう。
……家族が、変わり果ててしまったのが嫌だった。
不変のものなんてないのに、わたしはなんてわがままなんだろう。
お父さんがいて、七々ちゃんとも仲が良くて、夜は4人でお母さんの作ったごはんを食べる。
それが、……わたしの幸せだったの。