離してよ、牙城くん。
「……ちがう。七々ちゃんなんて嫌い」
あんなに好きだったころが、いまは靄がかかってはっきり思い出せない。
どこかでいま、わたしの知らない世界で七々ちゃんはだれかと笑っている。
そう考えるだけで、どうしてか辛かった。
「お母さんは、七々も百々も、大事な娘よ?」
わたしが七々ちゃんの悪態をついても、このお母さんはまるで気にしない。
まるで、わたしの本心じゃないとでも言うように。
あまのじゃくね、とでも笑うように。
……ちがう、のになあ。
ううん、ちがわないのかもしれない。
ただ、わたしは。
わたしから七々ちゃんがどんどん離れていくから、寂しくて仕方ないんだと思う。