離してよ、牙城くん。
いつしか、映っているのが3人家族になった、額縁に入れられた写真を見つめていると。
「圭さんも、なんだか最近、仕送りが多いのよねえ」
「……え、お父さんが?」
夕食を食べ終え、おはしをそろえて置いたお母さんを見つめる。
「そうそう。あの人、いろいろと事情があるのか、そういうのも黙ってやるし」
「ふうん……」
お母さんと生活の不一致で離婚したお父さん。
もう何年も会っていないし、いまどこで何をしているのか知らないけれど、毎月わたしたちやお母さんのために、いくらか仕送りをしてくれている。
独り身だろうし、自分の好きなことに使ったらいいのに……。
そう思うけれど、夜勤で無理して働いてくれているお母さんをすぐそばで見ているぶん、お父さんにもそんなこと言えなかった。