離してよ、牙城くん。
「俺の機嫌、どーやって直してくれる?」
期待していないような、からかった物言い。
牙城くんらしいけど、今回ばかりはムカッとした。
……牙城くんをギャフンと言わせたい。
わたしだって負けてないよって言いたい。
…………牙城くんに、ドキドキしてほしい。
……ええいっ、百々、覚悟を決めなさいっ。
「え、ももちゃ──── 」
グイッ、と、強引に牙城くんのネクタイを引っぱった。
思ったよりも力が強かったらしく、牙城くんがわたしのうえに覆いかぶさってきた。
当の本人は、まったく状況を理解していないようで、目を見開かせて固まっている。
「きげん、……なおしてあげるっ」