離してよ、牙城くん。
フルネームで呼んでくるあたり、ほぼほぼ確信を持って尋ねてきているにちがいない。
おそるおそる問い返すと、男の人は、目尻を下げて微笑んだ。
「僕ね、牙城クンの知り合い。知ってるでしょ? 牙城渚クン」
「えっ、牙城くんの……?」
「そうそう。族関係の顔見知り。って言っても、やばい奴じゃないから安心して」
ゾク……、つまり暴走族ということか。
ということは……【狼龍】のひと?
それなら、わたしの名前知っててもおかしくない。
牙城くんはやっぱり名が知れてるなあ、と感動しつつ、ちょっとだけ緊張がゆるんだ。