離してよ、牙城くん。
「七々ちゃんは、……【狼龍】、なんですか?」
震える声で問うたわたしに、景野さんは不思議そうに首を傾げてうなずいた。
当たり前のように。
誰もが知っているかのように。
なんで、わたしは知らないのかとでも言うように。
……そんなの、うそだ。
そんなの、あんまりだ。
だれも、そんなこと言ってなかった。
牙城くんも、そんなそぶり見せなかった。
わたしと似ている七々ちゃんのこと、たくさん知っていたのに。
なんで、ひとことも言ってくれなかったの……?