離してよ、牙城くん。
『……ナギくん、落ち着け』
椎名の言葉に、深呼吸を繰り返す。
だめだ。
百々ちゃんのことになると、必死になって頭が回らなくなる。
こんなんじゃ、守れない。
……俺を救ってくれた百々ちゃんを、守ってやれない。
熱が冷め、心が少し落ち着いた。
はあ、と深いため息をついた俺を待っていた椎名に、強い語気で問い質す。
「……【相楽】は、つうか景野は、【狼龍】を潰しに来たのか」
『たぶんね。あの頃、ナナに一度やられたのも気に食わねえんだろ』
「……そんなん知ったこっちゃねえわ」
あいつのことなんて。
もう、名前すら聞きたくない。
『ナギ、これからはわたしがいるよ』
……弱かった俺を、裏切った女のことなんて。