離してよ、牙城くん。
情けないほど震えているふたりの声。
それを聞くと、少し、緊張と不安が和らいだ気がした。
「紫苑、廉」
『『はいっ、渚さん!』』
俺、椎名に一度聞いたことあるんだよね。
このふたりは、【狼龍】の下っ端だけれど、いちばん俺のことを慕ってくれているって。
こんな俺を、必要としてくれている人がいるなら。
俺も、なにかを返さなければならない。
「俺の愛する女の子と、大事な仲間のために……ちょっと手伝ってくんない?」
待ってろよ、百々ちゃん。
ほかの男なんかに指一本触れさせねえよ。
だから、早く俺を好きになって。
それだけで、俺、幸せだから。