離してよ、牙城くん。
「にしても、ほんとナナと似てるわけだ」
反発しないわたしの横に座り、顔を覗きこんできた。
赤い目に捉われ、喉をごくりと鳴らす。
……このひとの、思い通りにはならない。
キッと睨みつけるわたしの顔に、景野さんはたばこの煙を吐いた。
「うっ、げほっ……」
「顔は見間違えるほどそっくりなのに、ナナと違って弱ぇんだろ? おとなしくしてろ。牙城クンの女?」
わたしをバカにしたように嘲笑う景野さん。
ピカピカに磨かれている靴をガツっと蹴りたい勢いだったけれど、こんな狭いところで何をされるかわからなかったから、……我慢した。
このひと……、七々ちゃんの話ばかりする。
恨みがあるのか、なんなのか。
そんなに気になるなら、本人に接触すればいいのに。