離してよ、牙城くん。
テーブルの上には、ふたつのまあるいケーキ。
おとうさんが、毎年買ってきてくれる。
わたしのお友だちにも、双子がいる。
その子たちは、毎年ケーキはひとつだって文句を言っていた。
なんでわたしたちはふたつなの? って聞いたことがあるけれど。
そのとき、おかあさんは笑って言ったんだ。
『双子だっていっても、あなたたちは“ふたり”なんだから。おかあさんもおとうさんも、ふたりぶんのお祝いをしたいからねえ』
わたしたちのおかあさんは、いつもほわほわしてる。
ねえ、が語尾なのは、おかあさんのくせらしい。
ほかの子のおかあさんよりも、うんと優しいのは最近気づいた。
めったに怒らないし、声だって大きくしない。
いつだってにこにこしているし、わたしと七々ちゃんは、そんなおかあさんが大好きだ。