離してよ、牙城くん。
しらぬまま牙城くん
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……懐かしい夢を見ていた気がする。
目が覚めると、自分の瞳には涙が浮かんでいた。
……寝ながら、泣いていたんだ。
上体を起こし、目を擦るわたしを見て、近くにいた景野さんは眉をあげた。
「……起きたかい?」
……見たら、わかるでしょう。
癪にさわるなあ……、と、顔をしかめながら、あたりを見渡す。
……車の中じゃ、ない。
揺れていた感覚はなくなり、いつのまにか冷たい地面に座らされていた。
「ここは……どこですか」
枯れた声で景野さんに聞くと、彼はなんでもなさそうに答えてくれる。
「僕らの、……【相楽】のアジト。
簡単にいえば【相楽】の人間が集まるための場所だよ」