離してよ、牙城くん。
わたしに接触してきたときから、景野さんは、ずっと七々ちゃんの話ばかりをしている。
景野さんと七々ちゃんのあいだに何かあったのは丸わかりだけれど、景野さんの執着は半端がない。
わたしの顔も、……彼女に似ているから傷つけられないんだ。
もしかして、……景野さんは七々ちゃんのことが好き?
……だとしたら、相当な歪んだ愛だけれど。
睨みつけるわたしの目を、彼は赤い目で飲み込む。
わたしの言葉に、景野さんはわかりやすく表情を消した。
「まあね。……あんなに強い女ははじめてだったから参ったもんだよ」
「七々ちゃんは、……そんなに強いんですか?」
「あたりまえだろ。この世界で、名を知らぬ者はほぼいない。【相楽】や【狼龍】と同じくらい、有名だ」