離してよ、牙城くん。
七々ちゃんのことを憎々しげに語る割には、一方では褒めているようにも聞こえる。
それほど、七々ちゃんのことを知っているのは聞かなくてもわかることだ。
……にしても七々ちゃんがそれほどまでに有名だとは初耳で、どこかではわかっていたくせに、少しだけ驚いてしまった。
息を飲むわたしに、景野さんは明後日の方向を見ながら、またもやたばこに火をつけた。
「……汚点だが、【相楽】はナナにやられた過去がある」
ふーっと煙を吐き出し、あたりに黒い匂いが撒き散らされる。
慣れないたばこの匂いに咳き込みそうになったけれど、話の続きが気になったから我慢した。
「え……」
【相楽】が……、七々ちゃんに負けた?
「おまえに弱みを見せるわけではないが、これは事実であるから述べている」