離してよ、牙城くん。
「もちろん、僕が命令したよ。僕がトップになったからには、さっさと【狼龍】を潰したかったからね」
「最低……っ」
「おいおい、せっかく可愛い顔が台無しだ」
……景野さんは、やはり非道だった。
少しでも、優しいのではと期待したわたしがバカだった。
彼は、れっきとした【相楽】の総長だった。
憎悪に顔をしかめたわたしの頰に、手を添えてきた景野さんだったけれど、歯をぎりぎりと鳴らすわたしを見て、苦笑して距離をとった。
「さすが、ナナの双子と言うべきか。猛獣を飼ってる気分だ」
「……っ」
「もういちど眠りたいかい? いつでも睡眠薬は用意しているが」
わたしの弱みを握ったかのように、景野さんは面白おかしく指を指す。
その先には大量に積み重ねられた睡眠薬があり、……何も言い返せなかった。