離してよ、牙城くん。
「その途端、牙城クンは立ち上がった。あんなに僕らにやられたのに、まったく蹌踉めくことなく、平然と。正直、バケモノを見た気分だった。
そんなとき、ナナは牙城クンの瞳を見つめ、言った。『ナギ、これからは、わたしもいっしょだよ』と」
僕らは、それを見て、呆気にとられて何もできなかった。
そう呟く景野さんは、切ない表情をしていた。
牙城くんが抵抗しなかったのは、【狼龍】の総長なんてやりたくなかったから……らしい。
ただ強いから、というだけで先代にその座を譲られ、座らされた。
ありがたいことなのに、牙城くんは喜べなかった。
いままでひとりで戦ってきたのに、どうやって、仲間を守るんだって。
荷が重かったんだと。
そのおかげで、【狼龍】のメンバーからは恨まれることも多かったんだって。
だから、自分が弱くなればいいんだって、そう……考えたらしい。