離してよ、牙城くん。




「無抵抗になってしまった僕たちは、ナナと牙城クン以外の【狼龍】のメンバーにやられた。……しかし、【相楽】は、【狼龍】に負けたとは決して思っていない。

僕らは、ナナに負けたんだ」




……ナナは、牙城クンの唯一の女だよ。

そういう牙城さんの表情には、わたしへの哀れみが浮かんでいるようだった。




暗闇に落ちた牙城くんを救ったのは……、七々ちゃんだった。


心も強く、優しい七々ちゃんは、温かく彼を包み込み、冷えた心を溶かした。




それが、どれほどまでに牙城くんの心を掴んだのか、……理解したくてもわたしには考えられなかった。




「牙城クンは、きっといまも尚……、ナナを想っているはずだ。
……あんなことが、あった、いまでもね」










< 280 / 381 >

この作品をシェア

pagetop