離してよ、牙城くん。
「無抵抗になってしまった僕たちは、ナナと牙城クン以外の【狼龍】のメンバーにやられた。……しかし、【相楽】は、【狼龍】に負けたとは決して思っていない。
僕らは、ナナに負けたんだ」
……ナナは、牙城クンの唯一の女だよ。
そういう牙城さんの表情には、わたしへの哀れみが浮かんでいるようだった。
暗闇に落ちた牙城くんを救ったのは……、七々ちゃんだった。
心も強く、優しい七々ちゃんは、温かく彼を包み込み、冷えた心を溶かした。
それが、どれほどまでに牙城くんの心を掴んだのか、……理解したくてもわたしには考えられなかった。
「牙城クンは、きっといまも尚……、ナナを想っているはずだ。
……あんなことが、あった、いまでもね」