離してよ、牙城くん。
「……残念ながら、それは無理だ。
僕が返したくないんじゃなくて、……モモちゃん自身が、きみたちのもとへ帰りたくないかもしれないな?」
「……はあ? どういう意味?」
「相変わらず、気の強い女だ。
まあ、意味なんてない。きみたちのお姫さまはきみたちのものへ戻りたくない。そのまんまだよ」
「…………そんなわけねえよ!」
景野さんの言葉に被せて答えたのは、牙城くんだった。
有無を言わさぬ口調に、景野さんを一瞬だけ黙らせる。
メラメラと燃える炎を映す瞳に、いまはじめて捕らわれた。
「百々ちゃんは、俺の人だ。だれのところにも行かないし、靡かない」
「……あはは、面白いなあ。それじゃあ、本人に聞いてみたらどう?」