離してよ、牙城くん。
フッと鼻で嘲笑した景野さんの言葉に、一気にわたしへ視線が集まった。
もちろん、牙城くんも、七々ちゃんの視線もある。
わたしに答えを委ねるように、しん、と閑散とした空間だった。
……俺の、人。
そう言い切った牙城くんを、いまはどうしてか、信じることはできなくなっていた。
「ねえ、……っ牙城くん」
牙城くんのとなりにいるって誓ったけれど。
できそうに……、ないかもなあ。
「……どーしたの、百々ちゃん」
いつものように返してくれるその口調も、どこか切なげに震えているように聞こえた。
自分の気持ちに、素直になってほしいよ。
わたしがいるから……、七々ちゃんと向き合えないんでしょ?
わたしはひとりで大丈夫。
だから。
本当は弱い七々ちゃんを、守ってあげてほしい。