離してよ、牙城くん。
「……牙城くんは、七々ちゃんのことが、好きなんでしょう?」
本当は自分で言いたくなくって、感情は消えたはずなのに、泣きそうだった。
双子であることが、こんなに苦しくなるとは思わなかった。
似すぎていることが、未来のわたしたちを辛くさせることなんて、だれが予期していたのだろう。
「……わたしに気を遣わなくていいよ、牙城くん」
「は? 百々ちゃんまじで何言って……」
「もう、いいから。
わたしをいい加減、──── 離してよ、牙城くん」
嘘だ。
ぜんぶ、ぜんぶ、嘘だ。
あわよくば、わたしを離さないでほしい。
ずっとずっと、そう思っているのに。
どうして、自ら彼の手を……大好きな牙城くんの手を、離さなければならないのだろうか。