離してよ、牙城くん。
「……景野、おまえ、百々ちゃんに何言ったんだよ」
憤りと怒りで……、遠目からでもわかる。牙城くんの手が、血だらけになっている。
ぽたり、ぽたりと落ちる血の滴を、だれも拭おうとはしない。
早く、手当をしてほしい。
わたしのことなんて忘れてくれていいのに。
……そんなの、当たり前に本心じゃなくて。
痛んだ心の修復は……、どうしたって時間がかかりそうだった。
「……事実しか、言ってないよ。きみと、ナナの関係とかね」
「景野、おまえ……っ」
掴みかかろうとした牙城くんを、「おい、ナギくんやめろ」と、椎名さんが言葉で制する。