離してよ、牙城くん。
……牙城くん、なんで泣いてるの?
わたしのせい?
それとも、それ以外?
わからないよ。
知らない牙城くんは……、不安で不安で、近づけないよ。
荒い息をする牙城くんを、椎名さんが支えている。
景野さんは、荒れる牙城くんへの接し方に気をつけているのか、もう口を開かなかった。
静寂が訪れるなか、話し出したのは。
景野さんでも、牙城くんでも、わたしでもなく。
……ひどく切ない表情をした、七々ちゃんだった。
「……百々、ナギ、祥華。
ぜんぶ、わたしのせいだから、お願いだから、これから話すこと、ぜんぶ聞いて」
息を飲むわたしたちの前で、七々ちゃんはぽつりぽつりと話し出す。
外を見ると、わたしたちを闇に落としたいかのように、激しい雨が降っていた。