離してよ、牙城くん。
女子中学生などだれもいない、寂しい夜道。
挙動不審に歩くわたしを、サラリーマンのおじさんたちが心配そうに見ていたのも覚えている。
きっと、可哀想な子どもに見えていたにちがいない。
そのときは、ひとまず声をかけられたり補導をされたりすることがなかったことに安堵していたの。
だけど、もちろん、こんな時間となると、不良と呼ばれる人たちはたくさんいるわけで。
「……おいっ! またアイツが逃げたぞ!」
「追え!! 牙城はまじでいま潰しておかねえとあとが面倒なんだよっ!」
「クッソ、見つかんねえ……!」
なにやら野蛮な会話が耳に入ってきて。
派手な髪色の男の人たちがわたしのまえを駆けていくのが見えた。