離してよ、牙城くん。
ひとまず、……今日のところは家に帰ろうかな。
せっかく抜け出したはいいものの、こんなことに、もし巻き込まれてしまったら意味がない。
ツイてなかったなあ……と、後悔し、帰り道に歩を進めようとした……、その瞬間。
ゆっくりと振り向いた銀髪の彼に、まんまと目を奪われたんだ。
「……綺麗、」
ぽつりと思わずこぼれ出た言葉は、慌てて口を押さえたのが効いたのか、男の人たちには聞こえなかったようで安心する。
目に焼き付いた桃花眼の彼は……、いままで見たことがないほど、恐ろしく美麗だった。
そんな彼を取り囲む人たちは、一斉に言葉を投げかける。
「牙城! 今度こそはおまえを倒しに来た」
「ひとりで平然として、いちいち癪に触るんだよ!」
「その顔に、傷作ってやる」