離してよ、牙城くん。
どれも本気の口調で、すごく恐ろしい。
こんな人数を……、ひとりで相手できるわけがないのに。
あの銀髪の人は……、牙城くんというのか。
見た感じでは、失礼かもしれないけれど、あまり強そうには見えない。
線が細くて、少し頼りない肩幅。
こんな大群で向かわないと相手にならないほどの男の人だとは到底思えなかった。
そのおかげで、あまりにも酷すぎて、だけど何もできなくて、息を飲むことしかしないわたし。
牙城くんとやらが負ける未来が容易に見えて、目を押さえて見ないようにする。
「さすがの牙城でも、この人数じゃキツイよなあ?」
「黙って負けろ!」
罵声を浴びせる声も、彼に摑みかかる男の人たちも、まるで見えてないかのように銀髪の彼は平然と立っていて。