離してよ、牙城くん。
やっと佐倉くんがなにかを言おうとした、
その瞬間。
ほんとにうまい具合でわたしに話しかけてきた人。
─── 牙城渚くん。
他クラスの、危ない不良くん。
「……な、なんで牙城くんがいるの……?」
さっき、教室にいなかったのに。
棒つきキャンディーを口に咥えてわたしの後ろに立っている牙城くんに、そう尋ねると、彼は片眉をあげた。
「百々ちゃんはさ、休み時間はだれと過ごさなきゃいけないんだっけ」
「え……、そんなの、知らないよ」
わたし、そんなこと決められた覚えない。
切れ長の瞳に見つめられて、
……言葉が出なくなって、うっと口を閉ざす。
────ガリっと、キャンディーが割れた。
これは……、
牙城くんが怒っているときの、わかりやすい印だ。