離してよ、牙城くん。



「……ごめんなさい」




ナギは、泣くことも止めることもなかった。

ただ、最後に見た彼の瞳は、とても冷たかった。



あのころは、本当にこの人しかいないと、お互いが信じていた。

それなのに……、わたしが、一方的に裏切った。




ナギは、わたしの言葉を聞くと、何も言わずに帰っていった。


雨の中、傘なんてさすことなく去って行く姿は、ひどく寂しかった。





わたしのことも慕ってくれていた【狼龍】のメンバーには、ナギと別れたことを告げ、【狼龍】をやめることも言った。


だけれど、ナギの幼なじみであるえみは、わたしに「気にしなくていいから」と、【狼龍】のメンバーでいてほしいと伝えてくれた。





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