離してよ、牙城くん。
* 恋 色 *
くるしみの牙城くん
.
「……これが、わたしのすべて」
弱々しく笑った七々ちゃんは、切なそうに目を伏せた。
牙城くんも、何も言わずに俯いている。
……大切な、妹。
七々ちゃんは、まだ、わたしのことそう思ってくれていたんだ。
それだけで、少し、心が温まった気がした。
重苦しい空気が流れるなか、次に口を開いたのは景野さんだった。
「……ナナ。まだ言ってないことがあるだろう」
そっと紡がれる言葉は、七々ちゃんにやわく投げかけられる。
責めるわけでもなく、急かすわけでもなく。
本当に七々ちゃんを想っていることがわかり、きゅっと胸が締まって苦しかった。
景野さんに尋ねられ、七々ちゃんは顔をあげる。
ふるふると首を横に振り、言いたくないことを示す。
だけれど、景野さんは強くうなずき、七々ちゃんに言葉をうながした。