離してよ、牙城くん。




「ナナ、きみにとっていちばん大切な妹に、誤解されたままでいいのか」






景野さんの言葉に、今度はわたしが顔をあげる番だった。


……わたしに、誤解?




七々ちゃんは、ここに来て、はじめて顔を歪め、……涙を落とした。


いままで愛し合っていた牙城くんと別れ、支えてくれた祥華さんとも離れ、ひとりで生きてきた七々ちゃん。


もしかして、わたしが七々ちゃんを避けていたことは……、彼女に大きな心の傷を負わせてしまったのかもしれない。




いまになれば、七々ちゃんや牙城くんを信じられなくなっていた気持ちも薄れていて。


……本当のことを、知りたい。






本当は弱くて繊細なふたりを、わたしが支えたいと思ったんだ。






< 315 / 381 >

この作品をシェア

pagetop