離してよ、牙城くん。
「……百々には、ぜったいに言うつもりは、なかったの」
震える声で、口を開く七々ちゃんは、いまにも消えそうで儚くて。
どうしたって、責める気持ちにはなれなかった。
「……うん、なに。七々ちゃん」
ななちゃん、と紡いだ声は、情けなくも小さかった。
……こうやって向き合って話したのは、なん年ぶりだろう。
どこで、まちがえたのかわからなかった。
なんで、七々ちゃんのことが苦手だったのか、その気持ちすらいまは理解できなかった。
「わたしは……、一度も百々を置いていったことはないの。止まっているのは……、わたしのほうだよ」
七々ちゃんを拒絶したときに、わたしは言ったことを思い出す。
『わたしを置いて、知らない道を行く七々ちゃんなんか……だいっきらい!』
わがままで、七々ちゃんの気持ちなんて1ミリたりとも考えなかった。
七々ちゃんは、わたしのこの言葉をずっと気にしていたんだ。