離してよ、牙城くん。



落ちる涙を拭かない七々ちゃんを、見つめる。


七々ちゃんも、わたしを見ていて、しっかりと目が合う。




……訪れる静寂。

人だけはたくさんいるくせに、だれもなにも言えなかった。




【狼龍】や【相楽】のメンバーも、水を打ったように静かだった。





七々ちゃんの言葉を待った。


なかなか口を開かない彼女を、何分ほど待っていたのだろう。





「わたしが夜に出かけるようになった理由はね、



──── シングルマザーのお母さんの負担を減らすために、夜中に働いていたからなの」










……七々ちゃんが小さくこぼした言葉が、どうしても……理解ができなかった。






「……っ、うそだ」





お母さんの負担を、……減らすため?

そのために、危険を冒してまで、……夜にバイトをしていたの?





まだ、……中学生だったのに?


なんで……、言ってくれなかったの?







< 317 / 381 >

この作品をシェア

pagetop