離してよ、牙城くん。
落ちる涙を拭かない七々ちゃんを、見つめる。
七々ちゃんも、わたしを見ていて、しっかりと目が合う。
……訪れる静寂。
人だけはたくさんいるくせに、だれもなにも言えなかった。
【狼龍】や【相楽】のメンバーも、水を打ったように静かだった。
七々ちゃんの言葉を待った。
なかなか口を開かない彼女を、何分ほど待っていたのだろう。
「わたしが夜に出かけるようになった理由はね、
──── シングルマザーのお母さんの負担を減らすために、夜中に働いていたからなの」
……七々ちゃんが小さくこぼした言葉が、どうしても……理解ができなかった。
「……っ、うそだ」
お母さんの負担を、……減らすため?
そのために、危険を冒してまで、……夜にバイトをしていたの?
まだ、……中学生だったのに?
なんで……、言ってくれなかったの?